花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
壮健で働き盛りであった父が突如として倒れ、その数日後に意識を死取り戻すことなく亡くなったのは、母の淫事を図らずも知ってしまってから一年後のことだ。父はまだ四十になったばかりだった。死因は働き過ぎによる過労が引き起こした心ノ臓の発作である。
父という大黒柱を失い、那須屋はガラガラとまるで地震で建物が倒壊するかのように呆気なく崩れた。父という存在があってこそ、那須屋は江戸一の大店としての面目も格式も保つことができていたのだ。
父という大黒柱を失い、那須屋はガラガラとまるで地震で建物が倒壊するかのように呆気なく崩れた。父という存在があってこそ、那須屋は江戸一の大店としての面目も格式も保つことができていたのだ。