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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 それでも、籐兵衛は最後まで、何とかしよう奔走していたようだ。その無理がたたって、突然、倒れてしまったのだともいえよう。
 だが、千汐は借金を残して死んだ父を不思議と恨めしいとは思わなかった。もとより、父が方々で借りた金は、ただ一人残った娘の千汐が返さねばならず、世間知らずの十六の娘にそのような途方もない金が工面できるはずもなかった。

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