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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 湿った息が耳朶にかかるのも厭で、千汐は何とか男から逃れようと狂ったように暴れた。その中、焦れた男に両頬をしたたか張られ、千汐の華奢な身体は吹っ飛んだ。
 男は欲情に翳った眼をドロリと濁らせ、まるで猟師が狙った獲物を追いつめるように千汐に迫ってきた。
―いやぁーっ。
 千汐はその刹那、枕許にあった行灯を両手で持ち上げ、男がけて幾度も夢中で振り下ろした。

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