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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 しかし、その切見世すらも千汐にとっては、安住の地とはなり得なかった。切見世で数年を過ごした後、千汐はまたしても、ここを負われることになる。
 突然の病魔が千汐を襲ったのだ。いや、突然、表に出たのは症状だけで、病魔は実はもう何年も前から千汐の身体の奥深くで徐々に、だが、確実にその身体を蝕んでいっていた。―千汐の取り憑かれた病魔はらいだった。当時は不治の難病とされ、また、罪深い者が取り憑かれると怖れられた業病だ。

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