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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

「それで、言われたとおりにここに来たんですが、いっかな誰も通りかからない」
 どこか落胆の響きを帯びた声で言い、男は肩を落とす。
 千汐は小首を傾げた。
「そのお督さんって女、歳は二十七、八で髪は上に結い上げてなくて、下ろして、こう横に流して一つにまとめてなかったかい。海老茶の縞模様の着物を着てたろう」
 男の丸い眼が更に丸くなった。

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