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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

「別に」
 千汐は小さくかぶりを振り、男から眼を背けた。こんな男にこれまで出逢ったことはなかった。―だから、何と応えたら良いのか判らない。子どものように澄み切った瞳の前では、どんな嘘も見抜かれてしまような気がした。
 たった一瞬で、この名も知らぬ男に惚れてしまったことも。まるで初めて恋を知ったばかりの少女のように、男と一緒にいると、胸がときめくことも。

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