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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 そういえば、自分はまだ、曽太郞に名前すら告げてはいなかった。最初は、ゆきずりで一夜を共にするだけの男に名など告げる必要はないと、次第に男に強く惹かれてゆく中に、名前を告げなかったことなど忘れてしまっていた。
 いや、もしかしたら、怖かったのかもしれない。出逢った瞬間から、男のきれいな瞳を見たそのときから、この男に惚れてしまったから、男の名を知り、自分の名前を男に教えてしまえば、二度と後戻りできなくなりそうで。

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