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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「つてを頼って調べてみたら、不仲だったはずのおかみさんとの間には、あたしたちが遭わなかった間に何人も子ができてた。―あたしは騙されてたんだよ。今なら判るけどね。十二も年上の女房持ちの男の科白なんぞ本気にする方がおかしいんだって。だけどさ、いまだに、あたしは、あの男(ひと)があたしとの約束を守って、いつかふっと眼の前に現れるんじゃないかと思えてならないんだよ。来るはずもない男を待ち続けるなんて、自分でも馬鹿というより、もうここが半分イカレちまってるんだとしか思えないけどね」

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