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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

     《其の弐》

 ―運命のその日は、深い湖のような蒼空がどこまでもひろがる秋の日だった。清七は和泉橋町の一角、五百石取りの御家人鳥居(とりい)主(もん)永(ど)正(しよう)忠之(ただゆき)の屋敷から町人町の裏店に戻る途中だった。折しもひと月ほど前から、親方が主永正の屋敷の普請を任されることになり、清七もまた、そちらに毎日通っていたのだ。

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