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君に恋した冬

第5章 新しい生活





小走りで駆け寄って来た大智は
由梨の顔を見てあからさまに眉をひそめる


「お前…その顔、どうした?」



すっかり忘れていたが、思い出すとまた
ズキズキと重い痛みが顔全体に広がる


『別に…何でもない』


少し怒った様子で大智は

「何でもないわけないじゃん。
何があった?誰にされたんだよ」


何怒ってんの?

てゆーかなんで家の前に居たの?

いつから…?

花井さんは?

声に出せない疑問を頭に浮かべ黙っていると


「俺には言いたくないか?」


少し寂しそうに聞く大智の顔を見て
由梨の心はえぐられそうな程にキュっとなる




言えない…



言ったらもう、普通の幼なじみですら居れない



大智くんを忘れるって決めたけど、


嫌われたく…ないよ…




『そーゆう訳じゃない。でも、ごめん

言えない』



キッパリ言い切った由梨を見て
少し驚いた大智だったが、すぐにまた
寂しそうな顔で


「わかった。引き留めて悪かったな…」



そう言って家に入ってしまった。




つーっと涙が頬を伝う



どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?

どうしてまた、「由梨」って呼んでくれてるの?

大智くん、一体何を考えてるの?

わからないよ…




ただ、言い知れぬ罪悪感に
涙を流すしか出来なかった由梨も
少し遅れて家へと足を進めた









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