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君に恋した冬

第9章 豹変する彼


「あんたさぁ。何があったか知らないけど、仕事は仕事だろ。ちゃんとしろよ」


やや強めの口調で言うと、由梨は分かりやすく身体をビクつかせた。


「…?」



由梨はカタカタと震えながら

『ごめんなさい…』


と小さく謝った。


明らかに様子がおかしい由梨を浅井は一瞥し

「別に怒ってねぇよ」


とだけ言って部屋を出て行った。



本当だ…浅井くんの言うとおり

仕事は仕事なんだから…しっかりやらないと…


またフラッと浅井が戻ってくる。
手には氷水の入った袋。


黙ってそれを差し出した。


『…ありがとう…』



腫れた頬にその袋をくっつけると
自然とざわついた心も少し落ち着いた



何も聞かずに
何も言わずに
ただ由梨の状況を見て判断し、優しくしてくれる


浅井くん…なんとなく誰かに似てる…
誰だっけ…?


そんな事を考えているうちに休憩時間は終わり
そのまま仕事に戻った。


他のスタッフや客からも頬の事を訊かれたが
転んだ拍子にぶつけたなどと陳腐な言い訳をして
その場をやり過ごした

そして5時間の就業時間を終える




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