君に恋した冬
第10章 一筋の光
それから3日経った
アキラとは会えないまま
相変わらず大智の見張りは厳しくて
でもおとなしく家に居る間は
大智はすごく優しかった
傷の手当てもしてくれた
でも、由梨の気持ちは沈む一方だった
食事もろくに喉を通さず
身長148㎝で40kgだった由梨の体重は
36kgまで落ち、見るに悲惨な痩せ方だった
「今日からまたバイトだよな。送って行くから」
『うん、ありがとう』
食事を摂ってないせいで声にも表情にも覇気がない
こんな私を見たらみんな心配するかな…
アキラは心配するのかな…
大智に携帯を取り上げられているため
アキラとは連絡がとれないままだった
家の場所は知っているのに
アキラは家にも来なかった
いや、来ていたのかもしれない
何度か来客があったようだが
全て大智が門前払いしていた
重い腰を上げバイトへ向かう
目の前がクラクラする
ミーンミーンミーンミーー…
ひぐらしの鳴く声を聴いて
もうすぐ夏休みも終わるなあ…
とぼんやり考えていた
アキラに拘束されてはや4日
それだけでも由梨の精神状態は限界に近かった
別れようなどと言えばどんな仕打ちをうけるかわからない
何も策はなかった
次第に由梨の気持ちは歪みだす
私が悪かったから大智くんを怒らせた
私さえいい子にしていれば殴られない
だって大智くん、本当はすごく優しい人だもの…
「じゃあ、終わる頃にまた来る」
『うん』
従業員用の入り口の扉を開く