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君に恋した冬

第10章 一筋の光



見慣れない天井にカーテン仕切り

ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…

規則的な機械音



「あ、目が覚めましたか?」


見知らぬ女性に顔を覗き込まれる


『…?』


まだ頭がついていかない


「白川さん。ここは病院ですよ」


優しく笑って看護士が由梨に告げる


病院…?


「少し待っていて下さいね。今先生呼んで来ますから」




「起きたか」



『っ!?』



ガバッと横を見ると、浅井が気怠そうにこちらを見ていた



びっくりした…
今、一瞬アキラかと思った…


それくらい自分はアキラを欲しているのかと
由梨は自嘲した


『どうして私…』


「いきなり倒れた」


『倒れた…?』



そう言えば、浅井くんの仕事を見ていて
頭が痛くなって、急にフワフワして…


そこから記憶がない…



「栄養失調だってさ」


それもそのはず。
由梨は気がつけば大智から思いを告げられて以来
まる5日程ろくに食事を摂っていなかった


『ごめんなさい、迷惑かけて…』


「…」



浅井は黙ったままどこか遠くを見ていた


その沈黙は決して嫌みなものではなく
別に…と言いたげなものだったので
由梨の心は久しぶりに暖かくなる


『ありがとう…』


「…」



本当、誰かに似てるなあ…



「失礼します」



扉が開くと同時に白衣を着た中年の男性と
何やらスーツを着た男性数名が
ぞろぞろと入ってきた



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