君に恋した冬
第10章 一筋の光
「いくら嫌な事をされたと言っても、暴力はやっぱりいけない事だと僕は思う」
『…はい。』
「君がその友達を守りたいのなら、
君が被害届を出さなければ、その人は逮捕されない」
『!!!』
被害届…
「でも、余罪があった時、もしくはこれからまた
事件が起きる可能性は、僕たちはやっぱり黙って見過ごす訳にはいかない」
『…はい』
「君が被害届を出さないのなら、僕たちはその人を逮捕出来ないってさっき言ったよね」
『…はい』
「でも、もし君以外の人がその友達から
君と同じ目に合ったとき、その被害者はたぶん
君の友達を許すことはしないと思うんだ」
そうかもしれない
由梨はずっと大智が好きだった
だからこそ、許せはしないものの
逮捕まではして欲しくなかった
「これから起こり得る犯罪の芽を摘むためにも、
僕たちに少し協力してくれないだろうか?」
この通りと言って、年配の刑事は由梨に
深々と頭を下げた
その刑事の話しに由梨の心が少し揺れる
『…名前は、黙っていてもいいですか?』
「ああ。構わない。何でもいいから話してくれ」
すぅっと息を吸い込み
『あの…』
事の全容を少し濁して話し出す