君に恋した冬
第11章 裏切り
しばらく泣いてスッキリした由梨は
ぽつぽつと話し出す
『どうして嫌いな私にそこまでしてくれるの?』
「…あぁ。確かそんな事言ったな」
その軽い感じに少し苛立ちを覚える
『本当にムカついたんだよ。あの時。
なんて失礼な人だろうって思った』
「まぁ…仕方なくね?堂々とキスマーク
つけてたら軽く見られてもおかしくないでしょ」
『それは…!あれは、その、何というか…』
「別に言い訳はいいよ」
『言い訳って…』
まぁ確かに言い訳なんだけど
「でもさ、そのキスマーク
あんたの暴力彼氏がつけたやつじゃないよな?」
『!!!』
「だとしたら同じ場所に
そんなエグい傷出来ないだろ」
アキラのつけたキスマークはもう消えてしまっているが
大智の残した爪痕は、瘡蓋になっていた
「その傷をつけたのは暴力彼氏。
あんたが浮気しなけりゃ暴力なんかなかった。だろ?」
『違う!これは付き合う前にされたの!』
何故だかわからないが
浅井には誤解されたくなくて
必死に弁解する
どうしてこんなに必死になっているのか
自分でも良くわからなかった
『首を見て、なんだかおかしくなって…
そのまま流れで付き合う事になったの』
「ふーん。じゃああんたの本命は
キスマークのそいつ?」
本命…
『違うよ…』
そう答えた声は驚くほど掠れていた
「じゃあ、やっぱり軽いんじゃん」
『…そうかも…ごめん』
「なんで謝んの?」
『…軽い女は嫌いだって、最初に言われてるじゃない』