君に恋した冬
第11章 裏切り
朝、検温で目が覚める
ふと横を見ると、浅井の姿は無かった
あぁ、帰ったんだ…
今度ちゃんとお礼しないと…
脇に挟んだ体温計を抜くと
36.5℃の文字が表示されている
「熱下がりましたね。具合はどうですか?」
看護士が点滴を取り替えながら言う
『もうだいぶ楽になりました』
「お食事は召し上がれそうですか?」
『はい。なんだかお腹ペコペコです』
昨日少しだけ肩の荷が降りたのが
由梨の食欲を復活させる
「良かった。それじゃあ朝食をお持ちしますね」
そう言って看護士は
空になった点滴袋と血圧計を持って
部屋を出ていった
ふと窓の外を眺める
眩しく照りつける太陽の光が
惜しみなく病室に行き届いている
静かな部屋には微かに蝉の鳴く声と
外の喧騒が聞こえる
大きな入道雲が綿飴のようで思わずお腹が鳴る
ぐぅぅー
誰も居ない静かな部屋に由梨の腹の虫がこだまして
思わずお腹を押さえた
お腹すいたな…
空なんて久しぶりに見た…
こんなにゆっくり過ごしたのは
本当に久しぶり…
ガラッとドアの開く音で、視線をまた部屋へ戻す
『浅井くん!?』
そこには帰ったと思っていた浅井が
買い物袋を下げて眠たそうに立っていた