君に恋した冬
第11章 裏切り
なんとか自宅の最寄り駅までたどり着き
また家までの道のりをゆっくり歩く
「あんた、ずっと1人で住んでんの?」
『うん、そうだよ』
「生活のためにバイトしてんの?」
『うーん、半分当たり』
何故かやたらと質問責めな浅井は
本当に由梨を心配して訊いているようだった
『誰にも言わない?』
「何が?」
『今からする話し、誰にも言わないって約束出来るなら教えてあげる』
少し悩んだ後に、わかったと浅井は返事した
『この話し、誰かにするのは初めてなんだけど』
由梨は毎月25日に届く茶封筒を思い浮かべる
『毎月ね、お金が届くの。
差出人は書かれてなくて、決まって
【今月分です】とだけ書かれてある』
浅井は黙って聞いている
『小学生の時から届きだして、今もずっと。
当時生きてた祖父母に訊いたら
受け取っておきなさい
って言われたから置いてある』
浅井は尚も黙っている
『小さいときは届いたお金、全額使う事もあったんだけど、最近は手をつけてないの。
ほとんど残してある。もし差出人がわかったら返そうと思って』
「そっか…」
やっと浅井は短く返事をした
『今の話しは内緒ね!絶対だよ』
「あぁ。わかってる。」
そこからはバイトの話しなどをしながら歩き
由梨の家がもうすぐそこまで見えてきたところで
ふと見知った影を見つける
何やらすごい剣幕で言い争いをしている様だ
よくよく目を凝らして由梨は絶句する