君に恋した冬
第2章 受験に向けて
もう忘れるんだから
変に意識しない。
10年なんて、大人になれば
たった10年って思える時がくる。
そう言い聞かせて
大智への思いを封印させようとした。
ふと立ち止まって空を仰ぐ
ちらほらと薄白い雲が
ゆったりと流れていて
まるで由梨の心とは正反対に
そこには綺麗な青があった。
『なんかもう、ぐちゃぐちゃだよ…』
しゃがみこんで頭を抱えたくなる衝動を抑えて
再び歩き出そうとすると
「由梨!」
ドキンッ
と心が弾んだ。
恋しい、あの人が呼んでる
私の名前を。