君に恋した冬
第13章 少しずつ
あれからアキラは残りのピザを
全部1人で食べてしまった
あの細い身体のどこにそんなに入るのか
由梨は不思議で仕方なかったが
アキラの新しい一面を見られた気がして
なんとなく嬉しかった
そして今はアキラの運転する車の中
どこに行くかは訊かされていない
夏の空は夕方の6時でもまだ明るい
もうかれこれ1時間程車を走らせている
相変わらず無言な2人だが
落ち着いた空気がそこには流れていた
途中のパーキングエリアで休憩をとって
また車を走らせ気がつけば辺りは真っ暗
しかも車は山道を走っている
だんだん由梨は不安になってきた
ここ…どこ…?
『ねぇ、どこに向かっているの?』
「…内緒」
また沈黙…
そして脳裏にはアキラとの出会いが蘇る
いくら好きだからと言って
あの忌まわしい記憶が心の底から消えた訳ではなかった
もしかして…また…
そしてまた考え込む
ダメだよ…アキラはもうあんな事しないって
言ってくれたんだ…信じないと