君に恋した冬
第17章 真実への階段
『私は…信じたい。
たとえ結ばれる事が無くても…アキラの優しさを信じたい』
夏の終わりに連れて行って貰った夜景を思い出す
──ここに、お前と来たかった──
あの時のアキラの言葉は、嘘なんかじゃなかった
「俺は、好きでもない女を抱いたりしない。
でも兄貴はそういう奴だ。」
『…っ』
それは由梨にも思い当たる節はある。
何せ出会いが強姦という卑劣なものだったから。
何も言えずに顔を俯けると、恭介は少し悲しそうな顔をしてこちらを見ていた
「俺なら…あんたにそんな顔はさせない」
『……』
ダメだ…これ以上は…
「由梨…」
『──!!』
名前で呼ぶなんて…ずるい…!
このままこの場にいては、恭介にすがってしまいそうだった
気がついた時には逃げるようにその場を後にして
ただひたすらに走った
走って走って走って…
耳も手も足も、寒さでちぎれる程に痛かったけれど、
そんなのどうでもよくて
ただ、心の中のぐちゃぐちゃしたものを
吐き出したくて走り続けた