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君に恋した冬

第17章 真実への階段





少しだけ身体を離して、真剣な眼差しで見つめられる


「兄貴は…あんたが思ってるような、優しい男じゃない」


キッパリと恭介は言い切った


『どういう…意味?』



完全に身体を離して、恭介は由梨から視線を逸らして話し出す


「俺、あんたに初めて会ったとき言ったよな?
軽い女は嫌いだって。

あれは、兄貴のせいだ。」


アキラの…?



「両親と訳あって離れて暮らすことになって、
俺と兄貴は2人でこの街に住むことになったんだ。

最初は凄く良い兄貴だった。

でも、兄貴が中学2年生ぐらいになった頃から
家に女が来るようになった。

その頻度はどんどん増えて、兄貴が高校生になった頃は毎日だった。

それもほぼ毎回違う女。


毎日毎日家の中は女の香水臭さと、喘ぎ声が充満してた。

俺はそれに耐えられなかった。」



恭介の話に心がズキズキと痛んで、どんどん黒く染められていく様だった。



「兄貴と俺の会話は気が付いた時にはもうなくて、
毎日違う女と寝ている兄貴にも、
そこにほいほい着いてくる女にもうんざりだった。

だから…大学に入ってバイトして、あの家が嫌で
大学のサークルの部室で毎日寝泊まりしてた。

それで20歳になったら部屋を借りてあの家を出るつもりだった。


だけど、母親が体調崩して…俺は実家に帰るために、今日あの部屋に鍵を返しに行ったんだ」



一気に色々なことを言われて、勝手に想像が膨らんで
由梨の中のアキラが、本当は偽物なんじゃないかと思ってしまう

遊ばれていただけだと、思い知らされた様な気分になる


『でも…私は、それでも…』


あの優しさが嘘だったなんて思えない


犯された記憶を、薄れさせてくれたのもアキラだし、
大智くんの時だって、会えない間に加奈子ちゃんを説得してくれていた

つらい時はいつも私が落ち着くまで抱き締めていてくれた…



あれは全部、アキラの本当の優しさだったって…信じたい




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