君に恋した冬
第17章 真実への階段
まだそんなもの持っていたのかとか
そんな風に思われたのではないかと思って
焦って由梨はそれを受け取って鞄に押し込んだ
『ごめんね、うっかりしてた…ありがとう』
「あれ?つけないの?ずっとつけてたのに」
歩美…もうこれには触れないで…!
『うん、もういいの。』
「?そう?じゃあ行こっか」
ほっと胸をなで下ろすと、鋭い視線を感じてそちらを見ると
アキラは少し怒った様な顔でこちらを見ていた
ビクッと身体が震える
その視線に全身を射抜かれた様な感覚になった
何で怒っているの…?
あ、そうか…いつまでも持っていたら
アキラも迷惑だよね…
沙也香に私が話してしまったら
うまくいかなくなるものね…
そっと視線を外して、こちらへ来た歩美と一緒に席を立つ
「この子体調が良くないみたいだから、送っていくね。皆は楽しんでて!あとで戻るから」
『すみません…お先に失礼します』
ペコッと頭を下げて踵を返し、そのまま振り返らずに出口まで向かった
背中にはまだ、アキラの視線を痛いほどに感じていた
店を出てすぐに足を止める
『やっぱり送ってくれなくても大丈夫だよ。外の空気を吸ったら少し楽になったわ。もう一人でも大丈夫』
「え、駄目だよ!送るよ!」
『ううん、本当に大丈夫。心配してくれてありがとう。歩美は戻って?』
「本当に大丈夫…?」
『大丈夫。ごめんね、私の為に開いてくれたのに…また話聞かせてよ』
心配する歩美に、半ば無理やりに店に戻ってもらった
さすがに送ってもらうのは忍びなかったが
せめて店を出るまでは一緒にいてほしかった
一人になってほっとする
あのテーブルでの、あの一角が
由梨にとっては拷問のようだった
アキラは…沙也香ともセックスするの…?
私にしたように、優しくして
プレゼントとか贈ったりするの…?
私は、あなたの何だったの…?