
君に恋した冬
第17章 真実への階段
信じたいと思っていた
でも、女の人といるアキラを見て
沙也香と話すアキラを見て
もう信じられなくなっていた
そこまで由梨は強くなかった
トイレを出ようとすると、歩美がこちらに駆け寄って来た
「由梨っ、どうしたの?急に走ってトイレに行ったって聞いて…」
『ごめんね、我慢してたんだけど限界で…』
あくまでも用を足した事にした。
「でも、なんだか本当に顔色悪いよ…
やっぱり帰ろうか?私送るよ」
『そう…?じゃあそうしようかな…』
「うん、そうしなよ。待ってて。私もトイレ行ったら戻るから」
『わかった。ごめんね』
歩美の優しさに甘えることにした。
もうアキラと沙也香を見ていたくなかった。
席に戻ると、アキラとバチッと目が合ってしまった
「……」
『…っ』
ほんの少し目が合っただけで、心臓が飛び出しそうな程に弾む
咄嗟に目を逸らして身支度を整える。
こんなにも…好きなのが…もう辛い…
アキラは何かを言いかけて、でもそれを辞めてまた沙也香との会話に戻って行った
「ごめん、お待たせ」
歩美がニコッと笑顔を浮かべて皆に目配せをする
「あ、由梨これ。水道の蛇口のとこに忘れてたよ?」
わざと置いてきたブレスレットを
歩美が手に持って戻って来てしまった
『あ…』
わざと置いてきたなんて言えない…
アキラもこちらに視線を向けていた
