君に恋した冬
第18章 想いにさよなら
それからすっかり塞ぎ込んでしまい
また更に1ヶ月が経とうとしていた。
状況は何も変わっていなくて、
バイト先では沙也香がアキラと仲良くなれたと
喜んで話してくる頻度が増え
バイトに行く事すら億劫になっていた。
相変わらず食事は喉を通さず、睡眠もろくにとれない。
また気がついた時にはやせ細ってしまっていた。
恭介は毎日毎日そんな由梨を気遣ってくれていた。
「おい…もういい加減にしろよ…」
恭介とバイト終わりに近くの公園で話をしていた。
『え…?』
恭介はひどく悲しそうな顔をして、そっと由梨の頬に触れた
「ひでぇ顔…」
ギュッと歯を食いしばって切なそうな顔で見つめられる。
アキラにフられてからこの数ヶ月
恭介が側で献身的に支えてくれていたから
まだ少しは元気でいられた
『そんなに…ひどい?』
ふっと自嘲気味に力無く笑う由梨は本当に痛々しかった
恭介は耐えきれずに由梨をギュッと抱きしめた
やせ細ってしまった由梨は、元から小さいのに、それにも増して小さくなっていて
強く抱きしめると壊れてしまいそうだった
久しぶりの人の温もりに、由梨の塞いだ気分も少し綻んだ
「もう、やめとけよ…兄貴なんか…」
切なそうに耳元で囁く恭介の声は、心なしか震えていた
「俺なら…絶対そんな顔させないのに…」
『恭介…』
「バカだよ…あんた…」
そうだね…本当にバカだ…
もう何の見込みもないのに
思い続けたって意味ないのに…
『人を…思い続ける事も、忘れることも…
難しいね…』
そっと恭介の背中に腕をまわした
その腕にはもうアキラがくれたブレスレットはついていない
『嫌いになれたら…いいのに…』
心からの叫びだった
出会いが酷すぎた
それからどんどんアキラの優しさに触れて惹かれていった
だから、もう嫌いになれる要素がなかった
「本当…バカだよ…由梨…」
『ごめんね…』
気持ちには応えられない
でもこうして辛いときはいつも
恭介に頼ってしまう
恭介の包み込むような優しさに甘えてしまう
ごめんね…ありがとう…