君に恋した冬
第18章 想いにさよなら
「どうされましたか!?」
『お腹…痛くて…破水…してしまって…』
痛い…どうしよう…怖い…
「落ち着いて下さい。お名前宜しいですか?」
『し…らかわ…です』
「白川さんですね?えーっと…」
カタカタとキーを叩く音がして
受付の事務員はハッとした声をあげた
「破水の量はどれぐらいですか?」
『たくさん…それから、お腹…っ…』
「白川さん、大丈夫ですよ。すぐ救急車をそちらに手配します。落ち着いて。出来るだけ動かないで下さいね」
『は…い』
ズキズキと今まで感じた事も無かった痛みが
下腹部から身体全体を突き抜ける様だった
アキラ…この子を守って…お願いっ…
程なくして救急車が到着し、由梨は産院に搬送された
本来なら、救急車はよっぽどの事以外は
妊婦に出動するケースはないらしいが
由梨はまだ妊娠8ヶ月に入ったばかり
順調な経過だったけれど
お腹の赤ちゃんはまだ推定1500グラムしかなく、
今産まれてしまっては早すぎる
このまま予定日を少し過ぎてからの出産くらいがベストだろうと先生と話していた矢先の破水だった
お願い…アキラ…赤ちゃんを助けて…
車中、そればかりが頭の中をループしていた