君に恋した冬
第19章 過去
何……?
声が出せないで固まっていると
「シンナーだよ。ほら、吸えよ。気持ちいいぜぇ~」
シンナー…?
どこかで聞いた様な…確か…ドラッグ…?
『や…やだ…』
やっとの思いで発した小さな声は、周りの女たちの甲高い声でかき消されてしまう
無精髭がジリジリといやらしい顔を浮かべて近付いてくる
やだ…助けて…アキラ…!
恐怖でギュッと目を瞑ろうとした瞬間
「やめろ」
その声に、騒がしかった部屋の空気は一転して
しんと静まり返った
声の主であるアキラが、ゆっくりと腰を上げて
こちらに一歩一歩近付いてきて
由梨と無精髭の間に立った
無言で無精髭を見下ろすアキラに、
「わ…わかったよ。そんな怒るなよ…!」
焦ったように部屋の奥へと歩いて行った
そのままアキラは由梨の顔は見ずに、手を引いて部屋を出た
触れた手が熱い……
不思議…
アキラにこうして手を握られているだけで
さっきまでの恐怖や不安が嘘みたいに消えちゃう…
由梨は必死にアキラの後を小走りで着いて行った