君に恋した冬
第19章 過去
その日はちょうど雨が上がった次の日だったから
山の地面はぬかるんでて
俺はその中でも一番危なそうな傾斜になってる場所を選んだ
被ってた帽子をわざと投げて、木の枝にひっかけた
当然みんなの前ではすごくいい父親を演じてた人だったから
すぐに俺の帽子に気付いてくれて
僕がとってあげるから晄君はあっちに行ってなさい
って言って、お前の父親は木に登り始めた
俺は…降りるときに、ぬかるんだ足元に少し躓いて転ぶぐらいにしか考えてなかった
でも、俺の予想とは全然違ってて…
降りたときに地面を踏み外して
そのままズルズル滑って行って…
気がついたら見えない所まで下に落ちてしまってた…
俺は頭が真っ白になった
異変に気付いた親たちが駆けつけてきて
その場は騒然とした
お前の母親がすぐに警察に連絡して捜索が始まった
そして次の日…
お前の父親は…遺体で発見された…