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君に恋した冬

第20章 真実に辿り着いて…





アキラは少し身体を離して真剣な眼差しで由梨を見つめた


「大事な事なんだぞ。もう生まれてから言っても仕方ない事かもしんねぇけど…一人で抱える問題じゃねぇだろ」



『ごめんなさい…』



アキラは由梨の頬に手を添えて、涙で濡れたそこを親指で拭き取る



「いや…俺が悪かった…気付いてやれなくて…」


『そんな…アキラのせいとかじゃなくて…
私が…生みたかったの…』



そう。そこに迷いは一切無かった。



『…アキラの子だったから…生みたかったの…』



その言葉で、アキラはガクッと膝をついてしまった



「…でも…今の話聞いて…後悔…」


"後悔"という二文字に、由梨の中で何かが弾けた様に気持ちが高ぶった



『そんな事思ってない!後悔なんてしない!
私があの子に会いたくて生んだの!』


少しの間止まっていた涙が、また思い出した様に溢れて零れる



『過去の事は…確かに酷い事なのかもしれない。

でも、覚えていないの。だから悲しくもなれなくて

アキラを嫌いになんてなれない!』


由梨もしゃがんで、うなだれたアキラの首に腕を回してギュッと抱きしめた



『私は、アキラの優しさを知ってる…。

両親がいなくて辛かった事もあるけど

でも、アキラと出会ってからはそんな事思わなかった。

例え全て思い出したとしても

私はアキラを好きでいる自信がある。

離れている間…アキラを忘れた日なんて1日だってなかった…』



回した腕に少しだけ力を入れて、さらにギュッと抱き締める



『アキラも…いっぱい苦しんだでしょう…?


もう充分だよ……


私こそ、気付いてあげられなくてごめんなさい…


ありがとう…アキラ……』



涙が止まらなかった


心なしかアキラの肩も少し震えていて
顔は見えなかったけど、多分泣いてた



過去を思い出したいとは思わなかった。


アキラの口から聞いたその話は衝撃的だったけれど
今の由梨は、それ以上にアキラを愛していたから…



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