君に恋した冬
第20章 真実に辿り着いて…
NICUと書かれた部屋の前で少し立ち止まって
アキラは何かを考えた様に由梨を見た
『…?』
由梨は何?と無言で伝えたが、アキラもそれを受けて無言で"ううん"と答えた
そしてそっと引き戸を開けて、一番奥の保育器に入った小さな赤ちゃんの前で立ち止まる
未来…お父さんだよ……
かっこいいでしょ…
早く抱っこしてもらいたいね…
触れることさえ出来ない我が子を、由梨は熱い目頭を押さえながら心で話しかける
アキラも、感情の読めない顔をして
ただひたすら小さな我が子を見つめていた
そして、一筋の涙がアキラの頬を伝った
ビックリして由梨は思わず小さく声をあげる
『…ぇ…』
口元に手を当てながら、空いた手で由梨の目を隠して
「…見んなよ…」
その涙が、由梨はとても嬉しかった