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　最早、手術もできないと言われ、沙絢は奈落の底に突き落とされた。本人には告げない方針だと主治医に頼んだので、あまりにも重たすぎる事実は十七歳の沙絢が一人で抱えることになった。
　でも、父はとうに気づいていたのだと思う。
―沙絢を一人残していくわけにはゆかない。沙絢が嫁にいくまでは元気で生きなきゃ。
　それが闘病生活を送るようになってからの父の口癖となった。