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Sincerely

第6章 そして、わたしは嘘をつく。

マサミさんの氷のような眼差しが、一瞬、フッと穏やかなものに変わった。

「そう…」

わたしの言葉を肯定したのか否定したのかは分からない。
でも多分、受け入れてくれたんだと思った。

「頼むからマサミ、変な勘ぐりするのはやめてくれよ。ユミコちゃんだって唐突な事でだいぶ驚いたハズだぞ?」
「ヒロヤさんがあちこちでいい顔しなきゃ、私だって妬いたりしないもの」
「あの…わたしもう失礼しますね。今日この後、用がありますので」
「ええ。いきなり呼び出してごめんなさい」
目は笑ってなかったけど笑顔になったマサミさんと、わたしに目で合図しようとしたヒロヤにお辞儀をして。

わたしはその場から逃げ出した───

二人の姿を見ているのが辛かったから。
わたしの方が嫉妬でぐちゃぐちゃになりそうだったから。

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