残業・メモ子
第44章 去女
それからしばらくは…
普通に…生活をしていた…
私は…人間観察は続けていたものの…
畠山さんと、高橋さんを見たあの日から…
アンテナが鈍くなったのか…なにも感じなくなった…
その――――――…三日後…
人事部に書類を取りに行くと…
伊藤の姿を見かけた…
辞表を提出していたらしく…
人事部に退社に対しての書類提出をしていた…
しかし、異様な空気が…漂う…
それは―――…
人事部の女子社員の冷たい視線や…男性社員の…微妙な顔が
伊藤の作り笑いを引き攣らせていたからだ…
『お世話になりました』
伊藤は、可愛らしく言うと…白いコートをひるがえし…無理矢理、微笑み…人事部をでていった…
伊藤の姿が、見えなくなった途端に…オフィスはざわつき…鎮火しつつあった、伊藤の噂に…再度火が着いた…
女子社員の伊藤に対する、陰口は…もはや…ひがみ、妬みに近くなっていた――…
なんだかんだ…伊藤は可愛かったし、男性陣にも人気があった…
私は、伊藤のあの引き攣った笑顔が……やけに気になった…