近くて甘い
第54章 恩返し
「ちゃんと…美咲ちゃんに気持ちを伝えられたんだから…
それだけでとっても立派なことなんだよ…?」
「でも…」
それだけ言って再び黙り込んでしまった隼人の元に周りのみんなが取り囲む。
「そうだよ…。
好きだとか、両想いになりたいとか、
そういうことを相手に伝えることって勇気がいることなんだよ」
浩平がそう言って隼人の頭を撫でた。
その言葉を聞きながら、要は何かを考えたような表情を見せる。
「でも、美咲ちゃんは、光瑠と結婚するんだって…」
「お、おいっ!俺はそんなことは言ってないからなっ!」
ずっと黙っていた光瑠が誤解を解かんとばかりに大声を出した。
「俺があんなガキに興味がある訳ないだろうがっ…お前がもっとあいつにアピールすればいいんだろうが!女を落とす方法なんかいくらでも伝授してやる!」
「っ…ちょっと!光瑠さんっ!隼人は9歳ですよ!」
キッと真希に睨み付けられた光瑠は、あーっと言葉を濁すと、要の肩に手を置いた。
「俺が、なんて一言も言ってないだろうが!関根が、だ!」
な!と突然合意を求められた要は、眉を寄せたあと、はあ…と気の抜けた返事をした。