近くて甘い
第55章 淡い恋の終わり
俺そんなに今強い感じで言ったかな…っ
顔を上げた愛花がポロポロと泣いているのを見ながら、浩平はアワアワと動揺をみせる。
「泣くなって…っ、俺が悪かったよ…っ」
「違っ…違くてっ…」
泣き止みそうにない愛花を浩平はまた抱き締めた。
「っ……」
「落ち着けって…しっかり聞くから…」
温かなそのぬくもりに、止めどなく流れていた涙が静かに止まった。
「………………家族が…っ、」
「ん…?」
「家族がこわいの…っ」
こわい?
なんだそれは…
ゆるく微笑んだ浩平は愛花の頬を撫でた。
「………そんなに俺の家族怖そう?」
「そうじゃなくて…」
暗闇の中でも分かる愛花の怯えた瞳───
ハッとした浩平は、思わず軽く目を見開いた。
「お母さんも…お父さんも…
私にはいないから……
だから…っ」