近くて甘い
第56章 片想いの終わり
お箸から滑り落ちたうどんが跳ねて、熱がる加奈子の動きを見て、春人はくすくすと笑う。
またに見える、加奈子の不安そうな表情に
気付かないふりをしながら…──
「春人は…何にしたの?」
口元を拭いた加奈子はそう尋ねながら、春人の食べ物を見て、思わず手を止めた。
「あ、うん、俺は
オムライス」
──────────多部さんっ…血がっ…
「っ………」
再び不安そうな表情を見せた加奈子を春人はじっと見つめた。
「かな…」
「………………」
「かな!!!」
「あっ、ごめんっ…」
春人の呼びかけに我に返った加奈子は、背筋を伸ばして春人の方を見た。
「どうかした?」
「いや…会社の食堂にもオムライスあって…
大好きだったの…
それで…間違えてケチャップ顔にぶちまけちゃったことあって…」