近くて甘い
第56章 片想いの終わり
「彼には感謝しているけど…
彼はもうただお幼馴染みだ…」
「っ………」
「これからは…
僕のことだけを見て欲しい…」
「あっ、当たり前ですっ……私は副社長のことしかっ…見えてませんからっ…」
真っ赤になりながらそう答えた加奈子に要は微笑む。
真っすぐな気持ちが素直に嬉しい…
気持ちが通うこの幸福感──
堪らず加奈子に顔を近付けた要は、目を閉じて、優しく、キスをした。
ゆっくり顔を離して、目を見開いたまま固まる加奈子に、再び微笑みを向ける。
「……好きだよ…」
ああ…もう無理っ…キャパオーバー……
要が甘く呟いたのと同時に──…
「たっ、田部さんっ…!?」
加奈子は、クラクラと目を回してそのまま要の腕の中で気を失っていた。