近くて甘い
第56章 片想いの終わり
「知らない間に
田部さんの事で頭がいっぱいになっていたみたいだ…」
「っ……そっ、あっ…」
突然の甘い言葉の連続に、どう返していいか分からない。
「幼馴染みの彼に、お礼を言っておかなくちゃね」
「えっ…?」
幼馴染みの彼って…
もしかしてハルのこと…?
「空港で打ちひしがれていたらね、彼が僕のところに来たんだよ」
驚いた加奈子の顔から推測したようにして、要は説明を始める。
「『どんだけ泣かせてるんだっ!』って怒鳴られたよ」
「っ……」
ハル…
「それで、『いいから早くこの住所に行けっ!今度泣かしたら次は絶対に連れて帰るからなっ!』って言われた…」
「そっ…やだっ……」
そんな事があっただなんて…
あんなにひどい事したのに、私のために……
「いい幼馴染みだね…」
ニッコリと微笑まれて、加奈子も涙を流しながら、笑顔でコクンと頷いた。
「でも───」
「え…っ」
突然ドアに追いやられて加奈子は、小さく声を上げながら片眉上げる要にトクンと胸を鳴らせていた。