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近くて甘い

第57章 副社長はジェントルマン


瞳を震わせる加奈子を藍は静かに見つめる。



「言っておくけど、香純だったらもっと、どぎついこと言うよ」



っ………!




「なっ、なんでっ…」




香純のことを考えてるのがバレたんだろう…っ




「分かりやすいもん、加奈子」



「っ…失礼っ…!」



「まぁ…だから、要副社長も加奈子が何に悩んでるか分かってもいいと思うんだけどね…」



「え?」



小さな声で藍が言ったことを、加奈子は聞き返したが、藍は何でもない、と言葉を誤魔化す。




「とにかく…」



ブラウスに手を伸ばした藍は、ゆっくりと加奈子のボタンを外した。




「女の方から迫るのも大切…だよ」



「べ、べつにわたしはっ…」



「なんだかんだ、女は求められてなんぼだと、私は思うよ。安売りしろとかそういうことを言ってるんじゃなくてね」



落ち着いた藍の言葉に、加奈子は口を開いたまま固まる。





「加奈子だって、うぶってわけじゃないんだから、分かってるでしょ?」




ごもっとも……



そんなことを思いながら、加奈子は小さく息を漏らしていた。

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