近くて甘い
第57章 副社長はジェントルマン
「大丈夫…っ!?」
痛がる加奈子に目を見開いた要はティーカップは急いでテーブルに着地させると、しゃがみ込んで加奈子の膝に優しく触れた。
「っ……だっ、大丈夫ですっ…」
触れられただけで、身体が反応して、それを隠そうと力が入ってしまう。
要は、ビクンッと震えながら、怯えるように身体を強張らせた加奈子のことを見つめた。
「……なら…いいけど…」
二人以外誰もいない有川商事。
要の甘い声に、トクントクンと心臓の鼓動がうるさい。
「……すみません…私…」
しゃがみ込んだまま、精悍な顔付きで見上げてくる要に、加奈子は目を奪われた。
突然しんと静まり返って、雰囲気がガラリと変わったのが分かる。
「っ………」
ギュッと握られていた拳を、上から包み込むように握られて、加奈子は息を飲んだ。
なっ、なんかっ…
ど、どうしたらいいんだろうっ…
じりじりと要の顔が近付いてくる…
恥ずかしい…っ
ガチガチに固まった加奈子は再び力一杯目を瞑って、要が唇を重ねてくるのを待っていた。