近くて甘い
第57章 副社長はジェントルマン
こんな何でもない瞬間に堪らなく心がけ温まる。
大丈夫…
考えすぎちゃ行けない…
ゆっくりじっくり、進めていけばいいんだから…
「失礼…で、何か言いたいことがあったのかな?」
笑いが収まると、要は優しく微笑んで加奈子のことをチラとみた。
「あっ、いえ、大したことじゃないのでっ…」
「……僕だって、別に大したことは話そうとしてないよ…」
「あっ…でも、ほんとなんていうかっ、」
「いいからいいから…」
優しく会話を促されて、加奈子は赤面した頬を両手で抑えた。
「いや……もうすぐ今年も終わってしまいますねっ…て…本当にただそれだけなんですけど…」
「あぁ…そうだね…気付いたらもうそんな頃だね…」
しんみりとそんなことを言いながら、要はソファーの背もたれに身体を預けた。
本当に…色々あった1年だった…。
ぼんやりと要の頭の中で真希が浮ぶ。
「真希さんも…再び高校生に戻ることが出来たと思ったら、もうすぐ受験で…そしてついに…社長夫人に…」
とつとつと真希のことを話し始めた要に、加奈子は少し不安になった。