近くて甘い
第57章 副社長はジェントルマン
「本当にすまない…。
だから…もう…帰──」
「副社長…」
身体を起こした加奈子は、要の腕を掴んで見つめた。
こんなに気持ちが溢れているのに、うまく言葉に出来ないなんて、なんてもどかしいんだろう…
どこから説明すればいいのだろう…
どうやって説明すればいいのだろう…
でも、考えすぎちゃいけないのかも…しれない…
「……………本当に……好きです…
私……副社長といると、自分の身体なのに、自分の身体じゃないみたいで…固まっちゃって…。
でも、無理なんかしてないです…
幸せすぎて怖いだけ…
ただそれだけです」
ゆっくりと目を閉じた加奈子は、要の後頭部を自ら引き付けて、今までにないほど優しく、自身の唇を重ねた。
いつもと同じように心臓は高鳴っているはずなのに、
それが心地よいと思うほど、心が穏やかだった。
「んっ…」
微かに開いた唇から、どちらからともなく舌が入り込んで絡んで行く。
本当に…
幸せすぎて
こわい…──