近くて甘い
第58章 社長夫人のお受験
「出来ますっ…」
私が思わず洩らした声に、相原先生は目を見開いたあと、にっこりと笑った。
「ありがとう…」
さすが、要さんが愛した人だと…そんなことを思った。
じゃあ…と言って小さく手を振った先生に会釈をすると、先生は、アッと声を出して、再び私の事をみた。
「……藤木さん…この直前期は体調管理が一番大事だから…」
「はい…」
「だから、そのプリントで、これまでの総復習をして、確認が出来たら早く寝た方がいいわ」
「……はい」
「でないと、
あなた、顔色悪いから…」
また言われた…
本当、私は色々な人に心配してもらって幸せ者だ。
「ありがとうございます」
頭を下げると、先生はそのままスタスタと廊下の奥に消えて行った。