近くて甘い
第58章 社長夫人のお受験
「発車します」
その運転手さんの声とともに、再び目眩が起こった。
どっ、どうしようっ…
ラッシュで淀んだ空気に吐き気までする…
落ち着いて…
すぐに試験会場には着くから…。
そしたら外の空気をしっかり吸って…
それで、試験を受けて…
チラと腕時計をみた。
大丈夫…お昼にはもう受験も終わってるから…
それまでの我慢…。
そう考えれば考えるほど、目の前が回って気持ちが悪くなってくる。
だけれど私は途中下車することなく、懸命に吐き気を堪えて予定の場所でバスを降りた。
「ふ…ぅ…」
外の空気を吸ったらわりと楽になった。
びっくりした…
あんな体験初めてだ…。
よりによって試験日にこんなことになるなんて、ちゃんとみんなに言われた通り試験前は無理しないでおくんだった…。