近くて甘い
第59章 運命の悪戯
「この案だと、Espoir(エスポワール)のそもそもの趣旨から外れることになる。
中々いい線までいっていると思うが、もう一度練り直す必要があるだろう…」
真剣な光瑠の言葉に返事をした社員に光瑠はフッと緩く息をついた。
「良くやってくれている…。気を落とすな」
「っ…ありがとうございます」
「少し休憩しよう」
立ち上がった光瑠は、時計を見た。
まだ昼前…か。
真希の試験は上手くいっているだろうか…
「真希さんの試験どうでしょうね…」
「ん…あぁ…まぁ、心配はしてないが」
あからさまに動揺を見せた光瑠をみて、要はクスりと笑う。
「まぁ、あれだけ勉強してたんですからものすごい緊張したりなさらなければ大丈夫だと思いますけどね…」
酒田の言葉に、光瑠はあぁ、と言葉を返す。
何も心配することなどない…
何も…
何も…
そう心で唱えるように自身に言い聞かせていたその瞬間、光瑠のポケットの中でスマホが振動した。