近くて甘い
第59章 運命の悪戯
着信…?
何の気なしに画面を見ると、自宅からといういつもは見ない画面だったことに驚いた光瑠は首を傾げながら、電話に出た。
「……俺だ…。どうかし──」
「ご主人様っ…!!」
あまりの大きな声に、光瑠は、思わず画面から顔を離した。
洩れた声に反応した要と酒田も、光瑠の方を見る。
この声は…愛花…?
「どうした…そんなに大声を出すな…」
「まっ、真希さまがっ」
鼻をすする音まじり聞こえた “ 真希 ” という単語に、その場が凍てついた。
「真希がっ…真希がどうした…っ」
まだ、試験が終わる時間ではないはずだ…
──────光瑠さんを愛しているから選んだ道ですから…
今朝の真希の言葉が頭を駆け巡った。
気のせいだと思っていた胸騒ぎが現実のものとなる…
「試験会場の前でお倒れになってっ…今病院にっ…」
ハッと息を飲んだ光瑠は、目の前が真っ白になるのを感じた。