近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
ビクンッと身体を震わせた二人を見て、要はクスッと笑った。
「っ……立つ必要があるのかっ…!?」
「転んだら危ないな…っ」
赤と白の幕で覆われた学校の体育館。
名前を呼ばれた真希は返事をすると、卒業証書をもらうべく立ち上がって壇上へと登っていく。
「やはり危ないっ…転んだりでもしたらっ…」
「全くだ…」
保護者席でハラハラとしながら真希を見守る光瑠と真希の父は、固唾を飲んでいた。
ゆっくりと礼をして壇上から降りる真希…
そのお腹はまだ大きくはない。
幸いなことに受験生である高校三年生の授業は12月いっぱいで終わっていたため、妊娠が分かってから真希は学校に行くことなく、安静に過ごすことが出来た。
そして、それはつまり、今日この卒業式が彼女の久々の外出だということを意味している。
「「ふぅ……」」
真希が自席に着いたのを確認した二人は同時に息をついて身体の力を抜いていた。