近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
呆れたように緩く笑った浩平くんが愛花ちゃんの頭を撫でる。
「……また会おうと思えばいつだって会えるよ…そんなに泣くなって、な?」
「でもっ…本当に幸せでっ………胸がいっぱいで…」
愛花ちゃんの言葉に誘われて、またパラパラと涙が止まらない…。
「もうやだ〜止まらないよ…っ」
「妊婦って気持ちの浮き沈みが激しいって言うけど本当なんだね…」
「……私だって愛花ちゃんと同じように胸がいっぱいなのっ…」
からかうような梨子に涙声で懸命にそう伝えたら、梨子はさらに面白そうに笑った。
あぁ…この時間がもっと長く続けばいいのに…
時は止まることなく、前に前に進んでいく──…
「……今日このあと、みんなはどうするの…?」
もっと一緒にいれたら…そんなことを思いながら私はみんなのことを見つめた。
「あー…っと…」
言葉を濁す亮くんを梨子が叩いた。
「私と亮はこれから一緒に出掛ける」
「あ、そうなんだ…」
「えっと…う、と…お、俺らもそうだよなっ」
言葉を詰まらせた浩平くんに、愛花ちゃんが慌てて首を縦に振る。
そんな二人を見て、何故か梨子がため息をついた。
……そっか…みんな、それぞれで過ごすのか…。
少し意気消沈していると、トンと肩を叩かれた感覚に私は振り返った。