近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
「みんな、本当にありがとう…」
周りを見渡して、私は微笑むと、ゆっくりと頭を下げた。
元気でね……
私に、幸せな思い出をありがとう…
「じゃあ、またね」
それだけ言うと、私はみんなに手を振られながら、光瑠さんも共に学校を去った。
あぁ…
もうこの廊下も、この門も…もうここの学生として通ることはないのか…
「………本当によく泣くな…身体に障るだろうが…」
「だって…っだって…」
バカみたいに涙が出て止まらない…
はぁ、と光瑠さんはため息をつくと、ゆっくりと私の身体を包み込んで頭を撫でてくれた。
「お前はよく頑張った…」
「………学校に…学校に行かせてくださって、本当にありがとうございますっ…」
感謝するべき人がたくさんいる…
そして、光瑠さんはその代表だ。
身体を離した光瑠は、真希のことを見つめて、その額に口付けた。
「よし…行くぞ」
「………え?行くって……」
そう言えばさっきも行くって言ってたけど…。
「どこに行くんですか?」
私の質問に光瑠さんは眉を寄せると、それはそれは不機嫌そうに私に顔を近付けた。