近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
「区役所に決まっているだろうがっ…」
そう言いながら、光瑠さんが車に乗り込んだので、私も光瑠さんに支えられながら乗り込む。
「区役所…?」
尚更訳がわからなくて目を見開くと、光瑠さんの額に青筋が浮き出てきた。
えっ……
ちょ、ちょっとっ…どうしてそんなに怒ってるのっ…⁉︎
「約束を忘れたのかっ…」
「約束……って…」
カッと目を見開いた光瑠さんは、ハァッと息を吸う。
怒鳴られると思って身体を竦めたら、光瑠さんは私のお腹に視線をやって、ふぅ…といきみを逃すようにして息を吐いた。
妊娠してから、光瑠さんは怒鳴るのを我慢してくれてる…のだ。
まぁだけど、怒鳴ろうとしたことに変わりはないし、怒鳴ろうと思うようなことが今あるんだろう…。
「あ、の…」
「籍を入れるのは卒業してから…」
「───…」
「つまり、卒業したら籍をいれる…そういう約束だったはずだ」
「え…じゃあっ…い、いま…」
「ようやく待ちに待った日が来た…」
真剣な目を向けられて、ドキっと心臓がなるのが分かった。