近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
少し照れながら、頭を下げたら、お父さんが腕を差し出した。
「───行こうか…」
「うん…」
「みんな真希さんをお待ちしてます。特に社長がね…」
「……行きます…」
この雰囲気は、何とも言えない…。
息を吸うたびに、幸せと緊張が混じった、そんな香りがするような気がする…。
お父さんの腕を掴みながら、私は、そのまま前に進んだ。
会場は、南の奥のイングリッシュガーデン…
たくさんの思い出が詰まっているあそこで、私は、みんなに見届けてもらいながら、光瑠さんの妻となる──…
「お姉ちゃーん!お父さーん!」
「隼人っ…」
イングリッシュガーデンの入り口であるアーチまで行ったら、蝶ネクタイをして正装した隼人がカゴを持って私のことを迎え入れた。
「随分素敵な格好させてもらったのね…。すっかりお兄さんじゃない…」
「うんっ!」
あどけない笑顔に、私とお父さんは顔を見合わせて笑った。
「隼人がお二人の前を花びらを撒きながら進みますから、お二人もそのままヴァージンロードを進んで下さい」
ついに…
「はい……」
要さんの指示に返事をすると、中の方から、聞き覚えのある結婚式の音楽が流れてきた。